ガラス工房〇マル 齋藤裕史さん・由香理さん
岩国で見つけた世界への夢
齋藤裕史さんと由香理さんは、夫婦共にガラス作家。岩国に来る前は、富山県を拠点に活動していました。
裕史さんが勤めていた工房の契約が終わろうとしていた2014年、新しい工房を構える場所を二人で探し始めます。
どこに住もうか…
工房を構えるなら「都会よりは田舎で」と考えて、裕史さんの故郷である京都や、由香理さんの故郷の岩国など、いくつかの候補地を挙げ、実際に見に行ったりもしていたお二人。
そんな中、独立とちょうど同じタイミングで双子の赤ちゃんが生まれてくることが判明します。
双子だとわかった時点で、「もうここや!岩国でいいやろう」と、由香理さんの故郷を選んだ裕史さん。
「決めた」というよりも「流れにのった」という感じで、抵抗なく岩国入りすることになったそうです。
のびのび子育てのスタート
まずは由香理さんが、一足先に岩国の実家へ戻りました。
そして、後日、裕史さんが、ガラスの道具などを積み込んだ大きなトラックを運転して遥々岩国まで。
無事に双子の男の子が生まれて、家族揃っての生活が始まりました。
あれから5年。
「自然の中で子どもたちと一緒に遊べるのは、すごく幸せだなぁと思います」と、口を揃える裕史さんと由香理さん。
工房と家とが近接しているので子どもたちと一緒にいられる時間が長いし、近くに家が少ないので遅い時間に騒いでも怒られない。
「子どもたちが好き勝手やって自由な感じに育っているのがいい」と、ここの環境に大満足の裕史さん。
車を少し走らせればスーパーがあるし、電車に乗って広島にも行きやすい。
困ることといえば、京都のような縦横まっすぐの道ではないから、裕史さんがなかなか道を覚えられないことくらいなのだとか。
子どもの医療費や給食費が無料なのも助かっているそうです。
新しい工房での仕事
新天地での仕事の人脈は全くなかったそうですが、岩国界隈ではガラス工房自体が珍しく、新しくできた「ガラス工房マル」はテレビや新聞等で取り上げられました。
作品を制作・販売するほかにガラスの体験もできるので、面白がって来てくれる人が多かったのだそうです。
そのうち岩国米軍基地(ベース)の人にも噂が広まり、体験した人が次は友だちを連れて来て、そのまた友だちを連れて…というふうに、一時は8割がベースのお客さんだったとか。
英語が喋れない裕史さんは、体験の流れの説明だけは覚え、あとの会話は由香理さんにお任せ。
「世間話みたいなのされたらニコニコしています」と、自分なりのコミュニケーション術を習得したようです。
体験のお客さん以外にも、近所のおばあちゃんが話をしに来たり、おじちゃんが工具を借りに来たり、野菜を持ってきてくれる人がいたり…と、すっかり地域に溶け込んだ様子。
「子どもがだいぶ大きくなって手が離れてきて、わりとのんびり自分のリズムで仕事できるようになってきました」と裕史さん。日々を楽しみながら前に進んでいます。
海の向こうで展覧会を
「岩国に来て良かったですよ。今すごく楽しいから」と笑顔で話す裕史さんには、これからの目標がいくつかあります。
ひとつは、これからもずっと体験を続けていくこと。そして、自身の作品をいろんな人に見てもらう機会を増やしていくこと。
さらには、海外で展覧会をするという新たな目標も見えてきたのだと言います。
「ベースの人たちがたくさん来てくれるようになって、外国の人との壁がなくなってきたみたいです。
アメリカやヨーロッパでも展覧会できたら楽しいだろうなぁ」。
岩国から世界へ。田舎での小さな暮らしの先に、大きな夢が広がっています。
ガラス工房マル
〒740-0326 山口県岩国市土生23ー1
Tel/0827-93-4533
営業時間/9:00~16:00(体験・見学は要予約)
休/不定休