スパイスのつぼ 弘本一宏さん・有美子さん

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Uターンして叶えた夫婦の夢

車が勢いよく走る道路(岩国市関戸)沿いにその店はある。
庭園によくありそうな小さな小屋だが、昼前になると車が何台も停まり、弁当を求める。
そこは、カレーと日替わり弁当のお店。オーナーシェフの弘本一宏さん(48)と妻・有美子さん(49)が切り盛りしている。
ここに店を作ってもう7年になる。

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夢のはじまり
弘本さんは大学を卒業した後、東京の居酒屋チェーンに就職し、調理場で働くようになった。
実は料理は中学生の頃から好きだった。
よく通った岩国のラーメン店で味わうチャーハンが美味しくて、それを家で再現しようとしていたのだとか。
居酒屋で同僚だった有美子さんと結婚すると、「いつか二人で店を持ちたい」と語り合うようになった。

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幼子とともに
一宏さんが28歳になった頃、二人に転機が訪れる。
一宏さんの父が他界したのだ。岩国の家には母が一人残され、長男だった一宏さんはUターンを決意。
夫婦には2歳の長男があり、有美子さんのお腹には新しい命が芽生えていた。
岩国に戻ると一宏さんは、市内の飲食店やホテルに勤め始めた。
そして数年が過ぎた頃、一宏さんは妻に「自分の店をやりたい」と打ち明ける。
それを聞いた有美子さんは、意外にもあっさりと受け入れてくれた。それはこれまでの仕事で苦労しているのをみていたから。
「とりあえず、やるだけやってみよう!」

岩国に戻ってから長女が生まれ、さらに次女にも恵まれていた弘本家は、3人の子持ち。
しかも次女はまだまだ手のかかる小学生だ。
しかし、「いつか二人で店を」と話したあの日を、忘れてはいなかった。

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夢と現実
2012年1月、「スパイスのつぼ」はオープンした。一宏さんはそれからというもの、朝の4時頃から働くようになった。
「想像より、ずっと大変でした」と一宏さんはオープン当初を振り返る。
その大変さは7年経ってもあまり変わっていないという。
しかし、サラリーマン時代にはなかった「自由がある」と一宏さん。全ての段取りを自分たちで考えて切り盛りする。
もちろん全ての責任が夫婦にかかるが、「美味しかったよ」と言われると格別の喜びがこみあげてくる。

ほったらかし?
「子どもたちは、ほったらかしなんですよ」と有美子さん。
忙しくて思うように手を掛けることはできないが、仕事の合間を縫うようにして、夜道を高校から帰る次女を迎えに行くこともある。
「親が働いている姿を見せることができたから、何かいい影響があればいいけど…」と一宏さんは笑う。
長男はすでに市内の会社に勤める社会人。長女もある職種を目指して学校に通う。次女は高校卒業を控えている。
「都会だったら、子どもが病気のときでも、すぐに戻るなんて無理でしょう。でも、田舎はそれができるから、いいですね」と一宏さん。

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「スパイスのつぼ」のカレーは、スパイスが効いているはずなのに、不思議に優しい味わいがする。
日替わり弁当は大人向けなのに、なぜか子どもに人気があるのだとか。
きっと夫婦のわが子への愛情がしみ込んでいるからだろう。
岩国に戻って、夫婦の夢は実現した。

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手作りカレーとお弁当・スパイスのつぼ

岩国市関戸1丁目(錦川沿い、アステム隣り)
TEL 090-9737-7388
休/不定休