M Gradation 松本めぐみさん

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地域に必要とされる喜び

昔ながらの商店街に溶け込む真っ赤なテント。店内の棚には赤いカープグッズが並ぶ。
広島東洋カープ二軍の本拠地である岩国市由宇町は、松本めぐみさんの故郷。
2021年春には、故郷の商店街に雑貨店をオープンしてから10年目を迎える。

思いがけないUターン
松本さんは、岩国市の生まれ。幼稚園のときに由宇町に引っ越して小・中・高と由宇町で過ごし、就職を機に広島へ。
ホテルで、宴会や披露宴、接客マナーの指導などの仕事をこなした。
25歳のとき、千葉県に新設されるホテルの宴会部門の課長に抜擢され、見ず知らずの土地に引っ越した。
1日に14件も披露宴をするような大きなホテルで、200人もの学生バイトさんに接客マナーを指導するなど慌ただしい毎日。
近くには親戚も友だちもいない。
疲れきって帰宅する松本さんを出迎えてくれるのは、飼っていた猫2匹だけだった。
気が付いたときにはストレスで心身共に疲弊していた。やがて体調不良になり、会社へ行くこともできなくなった。

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療養生活からの再出発
岩国の実家に戻ってからは、とにかくまずは心と体の調子を整えることに専念した。
デザイン性のある細かい作業が好きなので、結婚後、ビーズアクセサリー講師やネイリストの資格をとり、主婦をしながら腕を磨いた。
「好きを仕事にできたら楽しい!」と気づいたのは、その頃のこと。
再び由宇町へ戻った松本さん。
「自分ひとりじゃなくて、みんながそれぞれ、好きなこと・得意なことを活かして、補い合っていけたらいいな」と考えていたある日、ママ友たちと「みんなでお店やろうよ!」と盛り上がった。
1週間後には商店街の空き物件を押さえ、ペンキ塗りなどのリフォームをし、2011年の春に「エム グラデーション」をオープン。
「内装など、見た目にお金や時間をかけることより、お店の営業内容の方が大切!」と、話が出てからオープンまでに、半年もかからなかった。
「店を始めたのは、娘が小学校1年生のとき。実家と小学校の間にあるのが、この場所。
ランドセルを背負った娘が帰りに店に来ていました」と振り返る。
子どもの傍に居やすいのも、地方で自営することのメリットのひとつだとか。
自らビーズ作品を創ることも大好きな松本さんだが、店ではハンドメイド作家さんたちの夢を叶えるためのサポートに専念した。
「急には変われなくても、少しずつ自分らしい色に近づけるように…」
店名のグラデーションには、そんな想いも込められている。

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カープの赤で地域を元気に!
開業3年目の2014年には、カープ球団承認の手作りグッズの制作・販売をスタート。
由宇町の街づくりにも積極的に参加するようになった。
オープン当初は茶色だったテントも、『カープタウン由宇』を目指し赤に変えた。
「由宇町は人が温かくて、だんだんと地域の仲間になりたいと感じるようになりました」
お店のお客さんはママ世代の女性ばかりかと思いきや、意外にも上は80代と地元の幅広い年齢層の方が訪れる。
「地元のご年配の方は精神年齢が若くて元気!地域の人脈の中で私を活かしてもらっています」と謙虚な松本さん。

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時代の変化やニーズとともにお店の営業内容の比率を変え、常にお客さんに必要とされるお店へと変わり続けている。
「地方で夢を叶えるには、自分の主張にこだわりすぎず、お互いに信頼し合い、流れに沿って行きたい方向を目指すことが秘訣のように思います」と笑う。
これからは、移住者や開業したい人へのアドバイス、店舗のコンサルティングにも力を入れていく。
「商売をする上でも、子育てする上でも人生を楽しむ上でも田舎ならではのメリットがたくさんありますよ」

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M Gradation
エム グラデーション岩国市由宇町中央1-5-17
Tel/090-1189-8395
営業時間/10:00~17:00
休/不定休(主に土日祝)